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全国の看板屋さんに毎週交代でコラムを書いてもらいます。

第9回 〜思考回路の話
栃木県 まみうだ工芸 大豆生田洋さん

普段漠然と見ている物事について、「なぜ?」という疑問を持ったり当たり前、と思って
いることを違う角度から観察したりすると、本質が見えてきたり、勉強になることが多い、
とは、前回の書き出しの言葉と同じであるが、クリエイティブな仕事をされている皆さん
には、是非習慣にしていただきたいと思っているので心に書き留めていただきたい。

前回のコラムでは小学生の時の素朴な疑問を30年ぶりに思い返し、掘り下げていった
ら仕事の大切さを再認識することに繋がった、という例だったが、このようなことを考え
て いるときに、脳細胞の中ではどんなことが起こっているのか、という話をしたいと思う。
看板ナビで大脳生理の話とは意外かもしれないが、もしかしたら皆さんののアイデアや
発想に繋がる話かも?知れません。

脳神経細胞というのは「シナプス」と呼ばれる触手のような細胞によって連結されている
という。このシナプスの繋がり具合というのは幼児期には、誰でもほとんど差が無いと
いうのだが、これが、後々の環境からの刺激に合わせて、使うところと使わないところ
で整理されてしまうらしい。

そのシナプスの繋がりを「道路」に例えて話すとわかりやすい。
最初は狭いながらも真新しい道路が碁盤の目のように張り巡らされていたとする。
そしてある刺激に対してはこう反応する、こういう答えを出す、というように学習して
何回も刺激を受けていると、その道の部分が、高速道路のようになって、太く、交通の
流れも速くなり、すばやい反応や思考能力を発揮することができるようになるのだとい
う。訓練することによって能力がアップするわけだ。

しかし、そのかわりに滅多に通らない道、というのもできてくる。荒れてしまい、草が
生えて、いつしか通れなくなってなくなってしまう。荒れてしまった道や狭い道を通る
のは面倒だし、無駄な時間もかかりそうだし、ますます通らなくなる。そしていつしか
その道は消滅してしまう。

当たり前だと思っていることに疑問を持つ、という行動は、普通に走っていれば素早く
目的地に着くはずの高速道路を走っている時に、わざわざ降りたことの無いインターチ
ェンジで降りて、違う道を走り、違う景色を見て、入ったことの無いレストランに行っ
て食事をしてみたりすることと同じようなこと。あるいは、いつもクルマに乗って簡単
に目的地に着いている道を歩いてみたり、自転車に乗ってみたりしてゆっくりと道草し
ながら行くようなものかもしれない。クルマだと絶対に見えないものが見えるのだ。

当然リスクはあるけれども、その道の先には、見たことも無いような素晴らしい街や、
おいしい食事が待っているかもしれないし、その新しい道路が実は目的地に着くには最
高のバイパスだったりすることもあり得る。子供のころに見た街とは一変して素晴らし
い街になっていた、なんてことも考えられる。

人が思考しているときには、幹線道路と幹線道路が繋がると交通が便利になるのと同じ
ように、シナプスの繋がりが自分の得意な思考回路と思考回路との間にバイパスを作っ
たり、新たな思考回路を開発すべく道を探す働きをするのだという。
これは実際に顕微鏡でシナプスを見ると思考の幅を広げようとしてあちこちに触手を伸
ばし、繋がり先を探す、という行動をするのだというから驚きだ。脳神経細胞は、その
人自身の力により、物理的に作られて、その人の思考回路を決めているのだ。

〇まめ http://homepage1.nifty.com/mamiuda