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第22回 〜情報化社会
長崎県 有限会社町田美装工芸社 町田雅之さん


IT革命とかいう言葉のかなり前に「情報化社会」という言葉があった。それは情報を
移動したり共有したるする技術以前の、社会の価値観を示す言葉であったように思
う。人類が社会を形成するようになった頃から、ずいぶん長い間の価値基準は食糧
だったはずだ。つい最近になり、エネルギーや産業によって生産されるものも、そう
いった価値観の一部となってきた。そのエネルギーも化石燃料の限界が見え始め、
これからの土地の値段は上空を吹く風の強さで決まるんだ、と真顔で諭す友人もいる。
重厚長大から軽薄短小という産業構造の変化もつい最近経験したと思ったのに、今は
もう「ものづくり」離れだという。

情報化社会とは、情報を創出し発信する能力が問われる社会のことだと思う。ある時
期、交通インフラの整備が飛躍的に進んだ結果、その交通網に乗せて運ぶものを大量
に生産するところが豊かになった。これから情報通信網が整備されていけば、情報を
生み出し、発信できない地域の存在理由は減少していくのではないか。

往々にして無駄に時間を奪う会議を、私はあまり好きではない。「出席しない」、
「発言しない」、「決めない」、「実行しない」などというむなしさとつきあうのに
はようやく慣れた頃、パソコン通信とめぐりあった。その時私は、会議の無駄を排し
て、時間と空間の制約から議論を解放する画期的な意志決定の手段を得たと思った。
それからまもなく10年がたとうとしている。今ではインターネットがそれに代わる
メディアとなった。

議論というものは、本来異なった意見を論じ合うものである。いくつもの掲示板や
メーリングリストでは、その参加者はどこにいても、いうなれば会議の参加者であ
る。しかし、発言がない限り、それ以外の人はその人がその議論に参加している
こと を認識することはまずない。なにより発言ありきであることは、異論のないところで
あろう。しかし、「モノづくり」に品質管理があるように、発言にもスマートさは求められる。

今でもダイヤルアップという接続があるが、パソコン通信を始めた当時は、誰でも分
や秒単位での接続に料金が課せられていた。そういった中で、スマートさに欠ける発
言は、読み手に無駄な負担を強いるものとして、指摘されることもままあった。多く
の場合、発言の前に、その会議室の膨大なログに目を通して、その会議室のムードな
り暗黙の了解を肌で感じる必要があったといえる。
なにより、議論に参加する以上、その中で存在感のある発言というのは、それなりに
スマートなものであるにこしたことはない。

ここまで書いていたら友人からのメール。隣町に住む脳性マヒを持つプログラマーが
先月本を出版したので、その記念パーティーのおさそい。

「パソコンがかなえてくれた夢」〜障害者として生きる〜ISBN4-87498-259-x

歩行も会話も、ましてやキーボードの操作も不自由な彼とは、パソコン通信を通じて
知り合った。というか、親しくもなった。1本の棒をあやつってキーボードから入力
する様はさながらマジックである。健常者のタッチタイピングと比べて遜色ないスピード。
健常者が障害者を介助するのは通常の風景だろう。イベントでボランティアとしてパ
ソコンを通じてスタッフの仕事を助ける彼の姿を見るのは感動だった。その彼がまた
新しいソフトウェアを開発した。キーボードやマウスが使えない人のための入力ソフ
ト「Hearty Ladder」。一人でも多くの障害者にパソコンの楽しさを経験して欲しい
という、執念のフリーウェアである。ラブレターモードも準備されたこのソフトウェアは、
単なる文字を入力するためのものではなく、自分の思いを伝えるものとして開発された
と彼はこの本のなかで書いている。
彼や彼の仕事に触れるたびに、健常者であることに甘んじることなく、思いを抱き、
それを伝えることに真摯でありたいと思うことである。
メールはその仲間のひとりから。出版記念パーティーにはフルートを忘れないように
・・・と。

彼のサイト「まなつのみかん」は
http://www.try-net.or.jp/~takaki/
なかでもゲーム「さんさめ」はとてもポピュラーかも。

 


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